Day The Day
音楽と絵と晴れの日さえあれば
多分 生きて行ける。
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孵り道
そのとき教室は
むしむし 蒸し 蒸し していた 確か 「う へ へ」 私は机に突っ伏してスケベ笑いをした なぁに なに笑ってんの って友人達が声をかけてくる 「孵る」 「帰る?」 「違う!か え る の!生命が!」 俯せたまま大声を出したから 吐いた息で机の上が小さく曇る その楕円は まるで 「孵るって!なにが!?何隠してんの!?」 おなかのあたりにドッヂボールぐらいの大きさに巻かれた膝掛けを抱きしめて 私が突っ伏していたから みんなが何度も何度もそれを小突いた 駄目 駄目 壊れちゃう! って私は両手で阻止する 優しくそれが 壊れてしまわないように なによなによぉ 何拾って来たん! ってみんな気にしてたけど 先輩に呼ばれた だとか 先生のところに行かなきゃ行けない だとかでちりじりにどこかに行ってしまった 私はそっと顔を窓に向ける むしむし 蒸し 蒸し ムシ が私の肩にかかった髪あたりにまで入って来てじんわりと汗ばむ 窓の外で 雨はさらさらと落ちていく それは土へは還らない 中庭のコンクリートの溝に溜まって 排水溝を通って そのあと何処に行くのか 私はしらない はぁっ って息を吐いたけど それは窓まで届かず 小さな楕円はできなかった 私が窓に作りたかった 楕円は何処に行ったのだろう 「なぁ」 … 「なぁ」 … 「寝たん?」 … 寝てないよ 「起きてるやろ?」 ムシムシ 無視 「なぁ真剣になお前、ちょっと」 彼は 焦る 小声で私を起こそうとする 彼が私にだけ何かを伝えようとするその声に いつも胸が詰まる程のあたたかさを感じる よんじゅうにんじゃく の人間がいとなむこの部屋で 私にくれる 小さくて低い くぐもった声 「なぁほんまに頼むから」 私は彼の声が大好きだ 「お金はなんとかするから」 彼の声が 「産む なんて言うなよ」 好きだ 「姉ちゃんに相談してみるから、要らん事するなよ?ほんまに」 好きだから 「明日、また言うから」 行かないで はぁっ って息を吐く あなたが今吐いた息が たとえ楕円を描かなくても ちゃんとここに 小さな楕円がいるから だから ここにいて 私と一緒に 孵るのを見て って言いたかったけど 声も楕円と一緒にどっかに行ってしまった お願いだから 排水溝 には 飲まれてませんように read lead
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